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吸わないで?

「だから、ナギラさんはチヲカテトスルモノに変異した代表の世話をしたんだ、代表には〝御台の頼みを叶えたに過ぎぬ〟と言われて追い払われたそうだけど……」  そう続けたフジの眩し過ぎる笑顔にも変わりはない。時代が変化した現代では〝異形のもの〟と呼ばれる不安も些細なことなのだろう。フジは一番の秘密を教えようという興奮に、勿体ぶった笑いと共に楽しげに言葉を繋いでいた。 「ふふっ、ナギラさん、しつこく付きまとって、代表を糧なしでも平気なようにしてあげた」  アスカにはおかしな話だった。ヴァンパイアが糧を持たずに生きられはしない。現に男はアスカを糧にした。血はまだ吸われていないが、アスカの首筋には男の〝キスマーク〟が付いている。ヴァンパイアのフジには見えているはずだ。それを何故と考えるアスカの脳裏に、腹立たしくもヤヘヱの叫び声が蘇った。 〝我らが殿は!野蛮な輩とは違いまするぞ!生き血など!吸わないでござりまする!〟

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