287 / 814

霞を食って?

「クソっ」  アスカは呟くように小さく言った。〝キスマーク〟を付けたついでに血を吸ったと男を責め立てていた時に、主思いのヤヘヱの割り込みでうやむやにされた話だと気付く。クソマジにヤバい響きに惑わされたアソコも悪かった。そのせいで〝キスマーク〟を〝紋章〟と言い張る男に誤魔化されてしまったのだが、自分の血が口に合わなかったと、そう考えればアスカには納得が行く話でもあった。その全てを根底から覆されたのが悔しかった。 「けど」  ヤヘヱの叫びはフジの話を別の言葉で表現したものだとも気付く。まずはそこを認め、アスカは怒鳴らないよう気を使って聞き返していた。 「なら、あいつ、何を食って生きてんだ?」 「ナギラさんは御台様への愛に生かされていると言うよ」 「……愛」  ここでもアスカは怒鳴らないよう気を付けた。本当は怒鳴ってやりたい気分だったが、穏やかな口調を保って言った。 「あんた、それ、霞を食って生きてるって聞こえっぞ」

ともだちにシェアしよう!