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普通だから?
「その時に……」
フジが眩し過ぎる笑顔にも物悲しさを漂わせ、アスカに問い掛けた。
「ヌシさんが代表に何をしたか、わかる?」
問い掛けていても、答えを求めていないのがアスカには見えていた。飢えに苦しみながらも耐え抜く男の激しさは、感情を好物とするヌシには御馳走だ。舌舐めずりしていたことだろう。フジの問い掛けもそこにある。具体的に何をしたのかではなく、男が弄ばれたことをわかって欲しいのだ。
「ああ、クソってのがな」
アスカは優しい響きで口汚く罵った。それをフジが笑った。物悲しさが晴れやかさに駆逐され、明るさの消えていた口調にも軽やかさが戻る。
「ヌシさんは幻惑した人間を、何人も何人も連れて来たそうだよ、変異して間もない頃は人間らしい感情に迷わされるし、血を吸わないと決めても、飢えに負けてくじけるのが普通だからね」
〝いやぁぁぁっ〟
アスカがフジの明るく元気な声音に思わされたことは、細く柔らかな声の叫びだった。
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