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自然界の精気?
「クソっ」
その言葉がアスカには全てだった。男の変異は愛に呪われているようなものだ。そこに魂の解放だの、目くるめく愛欲の炎だのと、安易に考えた自分の薄っぺらさにむかついて、悪態ばかりが口に出る。
「クソっ、クソっ」
「うん、わかるよ」
「何が……っ」
わかると、アスカは怒鳴り掛けたが飲み込んだ。アスカとアスカの心に巣食う細く柔らかな声との問題でなければ、確実に怒鳴っていた。しかし、心を持ち出せば尊く聞こえることも、反論を許さない押し付けであり、優しさの強要だ。そう思って耐えた。
「わかるよ、代表を思ってのことなのはね」
フジにはアスカの心は見通せない。それで構わなかった。アスカはいい具合に勘違いをしてくれたフジに調子を合わせて話の続きを促した。
「で?」
「ナギラさんも同じなんだ、代表の為、自然界の精気を分けて欲しいと聖霊にお願いしたことがね」
話題が聖霊に戻ったことで、俯き加減だったアスカの気分も上向いた。
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