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暇してた?
男を弄ぶのに忙しくて、男の世話に躍起になるナギラがヌシには目に入らなかった。山男を軽く見ていたのかもしれないが、人間が自らの意思で望んだことに、聖霊が力を貸すとは思いもしなかったのだろう。愛に呪われ、飢えに苦しむ姿が御馳走であっただけに、男以上に激怒するのもわかるが、愛による変異の成り行きを確かめることで怒りを収めた。フジの話がそれをアスカに気付かせる。
「暫くして代表も受け入れたよ、ヌシさんも嫌がらせをやめたしね、ナギラさんのことも許して、あの感動ものの無表情を身に付けて行ったんだ」
ヌシにとって男は―――変異させた男達は、どこまで行っても慰み者だ。それを承知で男達は変異を望んだ。復讐に嫉妬に愛情にと、事情は違っても魂を人質に思いを遂げた。その男達に許された唯一の自衛が無表情だった。
「てか……」
そうなると、アスカには疑問が浮かぶ。
「クソガキが暇潰しっつったくれぇだ、野郎も暇してたんじゃね?」
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