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プンプン?

「で?」  アスカはフジに話の続きを促した。この瞬間に男への不満を叫ばせられたのなら、男を懸けてのタイマン勝負でもそうなるはずだ。怒鳴り合いに自信のあるアスカには有利に思え、自然と顔もニヤニヤする。そうしながら早く話せと促した。 「で?で?」 「うぅん」  フジは低く唸ってすぐには答えない。アスカのニヤニヤに腹を立てたというより、立て続けの催促にうんざりしたようだが、漏れ出た不満は隠せない。アスカは追い込みを掛けるつもりで言葉を換えて促し続けた。 「我慢すんなって」 「……だね」  思惑外れな返事に聞こえなくもないが、アスカはフジがその気になってくれたことを喜んだ。しかし―――。 「本当にひどい話なんだ、代表が皆さんの贅沢な暮らしを全部用意したのに、誰も感謝しない、僕のこともこき使うし、たまらないよ」  フジの不満は男になかった。仲間の〝皆さん〟にあった。フジは男を思って可愛らしくプンプンしていただけのことだった。

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