「ふざけやがって」 　フジの愛されアピールは鉄壁で、アスカには攻め込めそうにない。男を懸けてのタイマン勝負も、開始前に終了した気分にさせられる。その腹立たしさで口にしたことだが、フジには嬉しがられてしまった。 「そう言ってくれて、ありがとう」 　思い違いも甚だしいが、フジは眩し過ぎる笑顔を照れ臭そうに綻ばせて話を継ぐ。 「たけど皆さんはわかってくれない、隠れ棲んでいた頃のように全然法律を気に掛けないし、ヌシさんがしているからと平気で代表に付けを回すし、それ全部、僕が処理するしかなくて、仕事は好きだけど……」 　下っ端らしく、フジは〝皆さん〟への不満を大っぴらに言えないようだ。男を絡めて話すことで気持ちを晒した。 「代表は忙しさが慰めだと言うよ、でも僕はもっと別の慰めが欲しいんだ」 「別の……って」 　アスカは唖然とした。アスカも欲しい目くるめく愛欲の炎をフジに公然と先取りされたようで、さすがに言葉が続かなかった。