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ぶっ潰せ?

「クソったれがっ」  アスカの呆けた頭では口慣れた悪態しか出て来ない。それもフジにはきょとんとされてしまった。昔の女を何百年も引きずる男と付き合えるだけあって、肝っ玉も大きい。鉄壁な愛されアピールに負けた悔しさが癒えないうちにと思うと、アスカには不愉快でならないが、同時に愚鈍にも映るフジの素直さに説教を垂れたくなった。 「あんたさ」  アスカは自身の細く掠れている声に、喧嘩上等が学ばせた凄みを匂わせ、話して行く。 「野郎がとんずらしたあと、癒しっつったな、で、お次は慰めってか、ったく、なめてんの?」 「うん?」  フジには話が飲み込めないのだろう。取り敢えず返事をして、さり気なく聞き返している。 「癒し?慰め?」 「先に癒しって奴をぶっ潰せってこった、でねぇと、慰めってのもクソになっちまうぞ」  アスカはフジを焚き付けた。説教とはそうしたものと思うアスカには、フジが驚きに目を丸くしたことも狙い通りと言えるのだった。

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