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ジジイで?
愛に呪われたような男の魂を解放するには、男を懸けてのタイマン勝負が早道だ。そう思うアスカにすれば、二十代前半に見えるタイマン相手のフジに、三十代半ばに見える男を父親と言われて納得出来る訳がない。愛されアピールに感じた余裕も、父親と思う男への信頼に変わってしまい、修羅場ったあとで頂くつもりの目くるめく愛欲の炎も雲散霧消することになる。全くもって認め難いことだった。
「有り得ねぇ」
咄嗟に出た言葉に、フジの視線が玩具のような腕時計にまつわり付くヤヘヱからアスカへと動く。〝バカ〟と〝阿呆〟は仲良しだが、ヤヘヱのような傲慢さがフジにはない。いい子過ぎて鬱陶しくもある素直さで、アスカの口出しを歓迎するように答えていた。
「代表はカッコイイしね、だけど変異の時、四十を超えていたよ」
「四十ってオヤジも……」
アスカは自分の父親を思って呟いた。息子にはジジイでしかない年齢だ。それでつい顔を顰めて言った。
「クソっ」
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