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胸の苛立ち?

「ああ……っ」  アスカはヤヘヱを相手に、男をけちょんけちょんにけなしたかったが、勢いに任せようにもすっと言葉が出て来ない。眼裏にハンサムな逞しさがちらついて、変異年齢につい〝クソっ〟と言った時と同じ気分にさせられる。仕方なく、それを苛立たしげに繰り返した。 「クソっ」  男の変異が十八歳のアスカには父親のような年齢でも、ヤヘヱが言った〝ご懐妊〟にあるように、ヤルことがヤレる男をジジイというには無理がある。その事実は希望だが、過去には結果があり、喜んでもいられない。家臣の台詞を引き金に、女を説き伏せようとして言った男の言葉を思い出し、そこにも目くるめく愛欲の炎があったと気付けたからだ。 〝腹の我らが子と共に〟  変異年齢をチンケな悩みと突き放せても、胸の苛立ちはどうにも消えてくれなかった。 「なら」  男が変異直後に何をしたのかを知ってすっきりしようと、アスカは思う。 「野郎、自分の女をどうした?どこに運んだ?」

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