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相当にヤバい?
感情を弄ぼうとして、ヌシがアスカの意識内で見せた魂の記憶は、男が気を失った女を腕に抱き上げ、炎の中へと歩き出したところで終わっている。焼け焦げた衣服を払い落としたことで現れた男の裸体には眼福を得ても、着痩せすることがわかっただけで、行き先は不明のままだ。男の変異を目の当たりにして叫んだ女の辛く悲しい思いに、アスカの意識も遠退き、その後はわかっていない。それを知るには、玩具のような腕時計で呑気に寛ぐヤヘヱを脅して聞くのが手っ取り早い。
「ヤヘヱさんよぉ」
アスカは低い声音でわざとらしく呼び掛けから言葉を繋げた。
「あんた、野郎にべったりだ、知らねぇはずねぇよな?」
ヤヘヱにすればフジに聞けと言いたいのかもしれない。ヤヘヱは緩やかに揺らしていた光の粒をぴたりと止めて、奇妙な物言いで聞き返すという周到さで、聞こえなかったふりをした。
〝うっっにゅ?〟
どうやら相当にヤバい質問だったのが、アスカにもわかった。
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