306 / 814
おっとりと?
精霊とヴァンパイア、どちらに話を聞くと問われたのなら、アスカは迷わず精霊を選ぶ。人間の持ち物に宿る聖霊達の扱いに慣れているからだが、その精霊が名前を与えられた主人持ちとなると事情が変わる。聖霊達は個々であっても一つの塊で、自由奔放な上に名前を持たない。そういった精霊達は自分の不始末をヴァンパイアに処理させたりしない。陰からつついたりもしない。聖霊のヤヘヱがしたように、〝我らが殿〟に叱られるのを恐れて、ヴァンパイアのフジに泣き付き、アスカの相手をさせることは絶対にない。
「で?」
アスカは銀白色を帯びた錫色の瞳に目を遣り、諦め気分で促した。眩し過ぎる笑顔のせいか、フジの瞳には色合いが映し出すヴァンパイアのひややかさが感じられない。それでもフジの有能さを思えば、ヤヘヱのようなうっかりが望めないのもわかる。
「うぅん……」
おっとりと話し出したフジが頭を働かせ、話をまとめているのがアスカには見えていた。
ともだちにシェアしよう!