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冴えない僕?

「事務所の所長が……」  フジが親しげに口にした所長が何者だとしても、男と縁が深いのはアスカにも察しが付く。しかし、男の変異は何百年も前のことだ。何かしらのモンスターでもない限り、女を運んだ先であるはずがない。 「そいつが何?」  アスカは誤魔化されないようきつく問い返したが、フジには素直に頷かれた。 「うん、だから所長の実家がね、昔は名だたる商家で、代表が人間だった頃から懇意にしていたんだ」 「ああ……」  それならわかるとアスカは思った。商家の当主が何代にもわたって秘密裏に支えていたということだ。そう理解したアスカに、フジが一気に話す。 「代表の変異を隠す為に、御台様も一緒に亡くなったことにしたからね、商家なら蓄財も簡単で、ナギラさんが言うように、代表は武事に秀でて文事に優れるから……」  そこでふと言葉を切り、アスカを気にするようにして続けた。 「そんな代表を父親と思うなんて、冴えない僕にはおこがましいかな」

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