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出来んだろ?
フジにとって男は父親だ。感情では無理としても、理屈としてはわかっている。愚図ってみても変えられないことなのだ。そこはアスカも潔く認めようと思った。思ったが―――。
「クソっ」
つい言ってしまった。変異を可能にする程の激しさとは思わないが、感情が理屈を負かした瞬間ではあった。フジには父親でも、アスカには父親ではない。四十超えの変異年齢をチンケな悩みと突き放せても、ヤルことがヤレる男のヤリ生活を思うともやもやして、胸に居座る苛立ちも愚図りまくる。
「てかさ」
アスカは自分の感情に逆らわず、上から目線でむすっと続けた。
「あんたらの変異、クソガキにしか出来ねぇと思ってたぞ」
ヴァンパイアの〝亜種〟というのは興味深い話題だ。掘り下げてみることで、判然としない男のヤリ生活を知る手掛かりになるかもしれない。
「野郎に出来んなら、〝皆さん〟ってのにも出来んだろ?」
「うぅん」
フジが時間稼ぎに唸ったことは見え見えだった。
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