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優しさはいらない?

「で?」  アスカはフジをせっ付いた。唸って待たせるのがフジの遣り方とするのなら、時間を与えてはならない。 「ちゃちゃと話せ」  フジの態度はさり気ないが、そうすることで話せることと話せないことをより分けているのだ。それがアスカにバレバレでも、フジの眩し過ぎる笑顔が崩れたりはしない。男の完璧な無表情の笑顔版と、ふとアスカに思わせたくらいに完全無欠だ。 「ったく、ヴァンパイアってのはクソったれな奴らだぜ」  アスカの粗野な物言いにも、フジは眩し過ぎる笑顔で悠々と問い返せている。 「占いのお客さんにもそんな感じなの?」 「んな訳ねぇだろ、金、もらってんだぞ、優しいぃく優しいぃく、相手してやってるさ」  それの何が嬉しいのか、フジの眩し過ぎる笑顔の度合いがさらに上がった。アスカもドン引きの眩しさだが、明るく元気な口調に匂わせた妙な可愛さには怖気を振るう。フジは甘えるようにこう言ったのだ。 「うん、僕に優しさはいらないね」

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