「へぇ」 　アスカは心持ち感心するように言った。ヌシにとって間抜けな男二人には得するものが何もない。好物の感情にしてもヌシを子供扱いするようなお粗末さだった。幻惑して追い払ったのも当然と思うが、良心的で有能と評されるフジにまでそうした態度をしたとは思えない。 「てかさ」 　男を父親と慕う激しさで変異しようというフジの願いは、ヌシにはご馳走だ。何をするのかも始めからわかり切っている。 「あのガキ、意地悪に関しちゃマジでクソだぞ、あんたを変異させんの、野郎だけにはぜってぇさせねぇな」 　言いながらアスカはそれについてフジがどう話していたのかを思い出す。 〝だからヌシさんに頼むと……〟 　フジに父親と慕われているのだ。保護が信念の男に、自分以外の誰かが変異させるのを見過ごせはしない。 「で、脅しってか？」 「うん、そう」 「野郎、ホント甘ぇな」 　アスカが嫌みったらしく言ったことにも、フジは可愛らしい仕草で楽しげに頷いていた。