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旨みはない?

「〝亜種〟にヌシさんがすることは、名付けた三人からの願いに許可を与えるだけで、直接頼むと何をするのかは、お屋敷の執事さんでわかったことだしね」  しわがれ声のヴァンパイアが〝亜種〟の先輩では、フジも気を使うようだ。僅かに声を細めて話を継ぐ。 「執事さんはヌシさんの世話を熱心にしていたけれど、老いても仕えたいと変異を希望したんだ、ヌシさんは許可して、三人の中からアカさんを選んで命じたよ、アカさんは〝亜種〟がチヲカテトスルモノを汚すと献言していたし、完璧、嫌がらせだね、だけど逆らえないでしょ、そんなだから執事さんも偏屈になっているかな」  下っ端には下っ端の苦労がある。そう言いたげでも、フジの口調にしわがれ声への同情はない。声を細めた理由もヌシにあったと、アスカは気付く。 「ヌシさんは人間を変異させるのに飽きちゃったんだ、〝現代人の感情に旨みはない〟と言ってね、それで時代の変化を起こしたようなものだから」

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