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理由があんだろ?
「うぷっぷぷっ」
アスカは変態屋敷で男が〝キイ〟と呼ばれるのを聞き、そのふざけた響きを笑ったが、これがもし含蓄のある言葉からの引用と知らされでもしたのなら、つまらない話と忘れ去ったと思う。〝アカ、アオ、キイ〟の〝キイ〟とは余りに軽薄で、まさに爆笑ものだった。それでもフジには男が父親だ。アスカも自分の父親を他人にとやかく言われたくはない。的を射た批判でも邪魔臭く思ってしまう。それでどうにか笑いをこらえて言った。
「クソガキ、ぜってぇマジに付けやがった」
ヌシの子供じみた発想には恐れ入る。そこは間違いないと思って続けた。
「嫌がらせでしかねぇよな、けど、嫌がらせだけか?三人ってのにも理由があんだろ?憎悪に嫉妬に愛だっけ?クソガキも言ってたぜ、肉体を変えるピュアな感情ってのをさ」
アスカの疑問は〝亜種〟のフジには答えにくいことなのかもしれない。フジは眩し過ぎる笑顔に憂いを浮かべ、沈み込むように俯いていた。
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