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唯一漏らした?

「クソガキらしいんじゃね?」  アスカは笑うように返していた。フジには話せることだった。笑ったところで、気にしないだろう。 「てかさ」  子供じみた嫌がらせで〝アカ、アオ、キイ〟と名付けたことが、アスカには芝居掛かっているように思えてならなかった。騒ぎの陰に本質がある。ヌシの子供っぽさに関心を寄せても、そこに変異を可能にした感情があるとは誰も思わない。フジも〝亜種〟になってわかったと話していた。だとしてもアスカが生まれる何年も昔の話だ。〝キイ〟と呼ぶのがヌシくらいでは、聖霊達が噂しない限り、アスカにも知りようがない。 「愛……なんよ」  最新の話題といえばそれに尽きる。ヌシは愛で変異したのは男だけと話していた。男なくして愛は味わえない。お気に入りも糞もない。 〝愛なんて、いざとなったら脆いからね〟  アスカの意識内でヌシが語ったことだが、唯一漏らした本音でもあるようだ。アスカはフジにそこら辺りを話させたかった。

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