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どこのどいつだ?

「……愛?」  アスカの思いに気付いてはいないようだが、同じ言葉で問い返すフジの声音は微妙なびくつきを見せていた。〝代表は愛〟と言ったあとだけに、父親と慕う男を連想し、その〝愛〟にまつわる醜聞に怯えたのかもしれない。 「そっ、愛、癒しってもいいぜ」  フジの反応を引き出せたのだ。アスカはフジの気持ちをほぐそうと、からかうように答えていた。そのままさり気なく、深夜の薄暗い駐車場でお釈迦になったウルトラハイパースポーツカーを横に、長々話すことになった切っ掛けを思い出させる。 「野郎にもいるだろ?」  男は〝いざとなったら脆い〟はずの〝愛〟を、ただ一人、ヌシに味わわせた存在だ。飢えを満たす為に人間を幻惑する必要がないとしても、あの麗しい顔と体を武器に、この数百年、慰めの〝愛〟に溺れていたとしてもおかしくない。 「癒しってのが……」  言いながら、アスカはふとムカついた。その思いのままに言葉を繋ぐ。 「どこのどいつだ?」

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