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代表は断る?
「うん、僕、あのゲームの大ファンなんだ」
「へ……へぇ」
アスカは情けない声で答えていたが、内心ではほっとしていた。単なるゲームのファンなら、待ての姿勢で迫り来る〝しもべ〟ではないからだ。しかもフジはヴァンパイアだ。マゾっ気の変態だが、恐怖すら覚えた男達とは違う。そう思って気持ちを宥めたが、フジの眩し過ぎる笑顔を見ていると、何故か不安で、胸がざわざわして来る。
「でもね、大きな声では言えないけれど、僕……」
フジが声を潜めたことで、アスカの胸のざわつきも激しさを増す。
「うふっ、本当は〝ムチ姫〟の〝しもべ〟なんだ」
アスカは思わず後ずさった。その分、フジが迫り来るように前進する。そして熱のこもった口調で話を継いだ。
「代表が制作会社のスポンサーをしていてね、これは去年、発売を記念して作られたものだよ、スポンサー向けの非売品で、代表は断るつもりでいたけれど、僕のことを思い出して、それでもらってくれたんだ」
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