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近道ってか?
「ヤヘヱさん」
フジは時間に余裕がない。乗せて操ろうとしたアスカの思惑に気付いていたとしても、付き合ってはいられない。気を使いながらも心持ち強めに呼び掛け、臍を曲げられては大変といった配慮と、任務遂行に程遠い話から始めたことへの苛立ちを混ぜ込んだような複雑怪奇な明るさで続けていた。
「お屋敷よりも先に説明することがあるよね」
〝おおっ、そうであった〟
いい子過ぎて苦手なフジの素直さがアスカには憎らしい。ヤヘヱはアスカに言われたのなら拗ねて引きこもっただろう台詞にも、とんとお構いなしだ。のんびりと同じ調子で話して行く。
〝うむうむ、この辺り一帯、我らが殿に精気を与えし精霊の支配地なり、命あるものどもには禁足地、なれど精霊と通ずるうぬは、さに非ず〟
「ってことは……」
朝まで待たずに家に戻れるとすればそれに越したことはない。アスカは鬱蒼とした森を顎の先で指し、自分らしい乱暴さで言葉を繋いだ。
「近道ってか?」
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