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木深い森?
「少し違うかな」
ヤヘヱが答える前に、フジがさり気なく割り込んで来た。時間を気にしてのことだとアスカには気付けたが、ヤヘヱには気付けない。煌めきをおっとりと揺らしている。言うなれば部下の補佐に頷いたといったところだ。フジも調子を合わせてやんわりとヤヘヱの話を引き取っていた。
「聖霊の支配地というのは、時間と空間に歪みがあるということなんだ、だから歪みのない中で生きるもの全て、迷い込んだら二度と出られなくなる、お屋敷も代表だから建てられたようなものだよ、ヌシさんが欲しがったのもわかるよね、時代が変化して、この地を支配する精霊も、お屋敷への出入りだけは見ないふりをしてくれている、だけど周囲の森に関しては変わらない、迷い込んだらおしまいだよ、ただアスカさんは別、支配地内なら望む場所に一っ飛びで行け……」
アスカはフジに最後まで言わせなかった。駐車場を囲うように自生する木深い森に向かって歩き出していた。
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