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フジを冷たく?
「うっうん」
フジが感極まったように声を震わせて、眩し過ぎる笑顔で大きく頷いた。この瞬間、フジの頭に〝ムチ姫〟がいると思いもしないアスカには、こうも感動するフジの気持ちが理解出来ない。確かに励まそうとして言ったことだが、多少の嫌みも含ませていた。素直さだけでここまで喜ばれては、こそばゆくてならなかった。
〝うひひっ〟
ヤヘヱの意味不明な喚きがなければ、アスカはすぐにでもフジに理由を聞いていただろう。すっかり出来上がったヤヘヱに合わせて、先を越して明るく元気に続けられることもなかったと思う。
「アスカさんもね」
「はっ?」
新たなタイマン相手となった〝癒し〟を思い出すのにも一瞬遅れた。その僅かな間に、どこのどいつなのかを誤魔化した同じ口で、ヤヘヱも先刻承知の話と暗に言われたと気付く。
「クソっ」
それならと、アスカはポーチの高さを利用して、玩具のような腕時計にまつわり付くヤヘヱ共々、フジを冷たく見下ろした。
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