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今夜はそれが?

 フジは玄関と道路を繋ぐ短い敷石の真ん中辺りに立っていた。ポーチライトの明かりが微かに届くその場所で、アスカと向き合って喋っていたのだが、そこにはもう仄明るい夜の闇があるのみで誰の姿もない。フジが泥酔オヤジのヤヘヱを連れて、挨拶もせずに瞬間移動で自分の別荘へと戻ったのを知らされるだけだった。 「あの野郎……」  拒絶される前に逃げたとしか、アスカには思えなかった。腐れ男を父親と慕い過ぎた結果だろう。都合が悪くなると姿を消すところまでがそっくりと、アスカは思う。 「町内会?」  憤然と呟き、強い口調で言葉を繋ぐ。 「んなもん、ぜってぇしねぇぞ」  フジを出禁にするよう固く心に言い聞かせる。それだけではまだ足りない気もして、仄明るい夜の闇をひと睨みし、マントの裾を翻す勢いで背を向けてから、玄関のドアを開けて中に入った。 「ん?」  家の中はしんとしていた。普段は聖霊達の騒がしい声に出迎えられるが、今夜はそれがなかった。

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