「ふんっ」 　アスカは鼻先で馬鹿にするように笑った。静寂で出迎えた聖霊達の魂胆はわかっている。彼らはアスカがドアを開ける直前まで騒ぎ立てていた。それがドアを開けたと同時に、ぷっつりと黙り込んだ。おとなしく家で待っていろと言われことへのお返しだろう。静寂に慣れていないアスカを不安にさせて、アスカの方から媚びさせようと画策したのが嫌でもわかる。 「好きにしろ」 　アスカは突き放すように言って自室に入り、マントとロングドレスを脱ぎ捨て、Ｔシャツとスウェットパンツに着替えた。汚れ物をひとまとめにしてバスルームに行き、ドラム式洗濯機に放り込んでスイッチを押し、洗面台で顔を洗った。 〝許してあげて〟 　心地良さと一緒に涼やかな声がした。人間が作り出した物に宿る精霊達にない淑やかさにはアスカも勝てない。蛇口から流れ出る水を両手ですくい、清らかな煌めきを伴って続けられる声にもそっと静かに耳を傾けた。 〝彼らも反省している〟