356 / 814

俺が先だ?

「ってことで……」  アスカは水の精霊にシャワーを浴びるのは朝にすると告げて、自室に戻った。今後どうするのかも朝になって考えることにして、ベッドに倒れ込む。相当疲れていたようで、慣れない静寂も気にならない。瞬く間に寝入っていた。 〝み……つき〟  名前を呼ぶ声にはっとしても、クソマジにヤバい響きで聞いたことで、その声をアスカの意識は夢と捉えた。夢の中では自由だ。頬を滑るひんやりした感覚に震えようが、冷たい息遣いに興奮しようが、精霊達に知られることはない。目覚めた時には悲惨な事態になるのは避けられないが、夢の中では好きに楽しめる。 「ならさ」  どうせ朝には惨めになるのだ。目くるめく愛欲の炎の準備運動といった気分で、裏切り者でも可愛いアソコを未知なる喜びへと旅立たせてやろう。そう思って夢に囁く。 「俺が先だからな」  小声でもそこは譲れないと断言したアスカの意識に、蕭々とした笑いが低い声音でしめやかに響いていた。

ともだちにシェアしよう!