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水の精霊にまで?

「クソっ」  シャワーはぎりぎり間に合った。身も心も、もちろんアソコもすっきりだ。それなのにアスカは何とはなしに落ち着かないでいた。〝クソ〟と言ったのも、水の精霊の冷やかしがなかったことに苛立ったからだ。アソコの醜態をいじられるのは毎度のことで、逆に何も言われないと不安になる。 「ん?」  そこで不意に思った。水の精霊の沈黙は朝になっても続く異様な静寂を示唆したものかもしれない。 「悪いのはあいつらだろ」  アスカは腹立たしげに言って、水の精霊にも思い出させようと続けた。 「クソガキとコソコソしやがってよ」  その反省もあって、聖霊達は一晩静かにしていた。それが反省になるくらい、彼らは昼夜を通して喋っている。死者の声に泣いてばかりいた幼い頃は、彼らのその喋りに慰められた。感謝もしているが―――。 「てかさ、なんなの?」  静寂の中にアスカの声だけが虚しく響く。精霊達は当然としても、水の精霊にまで無視をされてしまった。

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