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それでも粘る?
「好きにしろ」
アスカは夜と同じ思いで突き放すように言った。日が昇れば聖霊達も自由気ままに騒ぎ出すと思っていた。まさか気配を消しての徹底した沈黙で、元は仲間のヤヘヱのように拗ねて引きこもって愚図りまくるとは思わなかった。一晩反省したことに応えて、ここはアスカの方から声を掛けろと言わんばかりだ。アスカにはそうとしか思えなかった。
「ったく」
優雅で清らかな水の聖霊にしても同じことだ。肌を流れ落ちる水音が柔らかであっても、飛び散る水の煌めきは朝の日差しに映えて笑うように明るい。水の聖霊はアスカと精霊達の我慢比べのような攻防を楽しんでいる。アスカを無視したのも精霊達のだんまりを際立たせようとしてだろう。
「ふざけやがって」
これは水の精霊に向かって言った。この攻防にアスカの勝ちはない。それでも粘るとわかっているからこそのお楽しみと知る。
「クソっ」
アスカは水の聖霊への腹立たしさも一杯にしてバスルームを出た。
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