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それを思い出した?
「そっちがその気なら、こっちもだぜ」
とことん粘ってやると、アスカは思った。
「で、先に降参すんの、あいつらかもしれねぇし」
水の聖霊はアスカが負けると踏んだようだが、廉潔とした聖霊にも間違いはある。アスカの精霊達は普段からのべつ幕なしに喋っている。そう長く我慢は出来ないはずだ。
「だろ?」
水の聖霊に変わらず無視をされたが、気にしない。バスタオルで体を拭き、ボクサーパンツに足を通して、Tシャツとスウェットパンツを着る。顔を洗ったあとで廊下に出て、しんとする中を足早に歩き、キッチンへと向かった。
朝食の準備は簡単だ。母親が小分けして冷凍したものをレンジで解凍すればいい。焼き鮭にヒジキの煮物、茹で野菜の胡麻和えに味噌汁、ご飯を用意して、椅子に座った。慣れない静寂も空きっ腹には関係ない。ぱくつき、腹を満たして、鼻歌まじりに片付けをした。
「けど……」
占いの仕事は精霊達の噂で成り立っている。それを思い出した。
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