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昼まで沈黙?
「ああ、クソっ」
アスカは悔しげに続けた。水の精霊が何を今更と、それでも遠慮するように遠くで淑やかに笑うのにも気色ばむ。
「てかさ」
聖霊達が人間っぽく、仕事は仕事と割り切れるのなら問題ないが、彼らは精霊だ。仕事をしない。占いを生業にするよう勧めたのも、ろくでもないと耳を塞ぐアスカに、好きなだけ噂を聞かせられるからだ。それで成り立つ仕事というのは理解するが、アスカにも意地がある。
「あいつらなしで、適当にってな」
そうは言っても、彼らの噂に嘘がないのもわかっている。ろくでもないと思っても、真実に触れた者として、アスカなりに客の悩みには真剣に答えていた。適当にしないことは水の精霊にも見抜かれている。
「けどよ」
ここで退くのは早計に思えた。今日の予約は午後に集中し、昼前には一件もない。午前中を臨時休業にしても困らないことになる。それならアスカはただ待つだけで済む。精霊達が昼まで沈黙していられるはずがない。
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