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先回りした?

「よし」  アスカはにんまりし、すでに勝ちを手にした気分で言葉を繋いだ。 「俺って天才か?」  さっそく仕事場に行き、臨時休業を書き込もうと受付にあるノートパソコンを開く。直後にメールの通知が画面に現れた。見ると、出入り禁止にすると決めたフジからだった。 「ん?」  町内会、そうした文言が頭に浮かび、咄嗟にゴミ箱に捨てようとするも、親に叩き込まれた礼儀に邪魔をされる。 「クソっ」  アスカは仕方なくメールを開いた。 〝代表の指示により〟  その始まりで町内会には程遠い内容であるのがはっきりする。腐れ男と町内会、どちらが癇に障るのかは微妙なところと思いはしたが、読もうという意欲は起きて来る。 〝今後一週間臨時休業とする知らせを、アスカさんのホームページに載せました〟  続く一文には考えさせられた。父親も認めた良心的で有能な代理人が、代理人権限でアスカがしようとしていたことに先回りしたと理解するのにも、少しだけ時間が掛かった。

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