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静寂が崩れた?
「な……っ」
アスカは余りの腹立たしさに、一瞬息が詰まって思うように言葉に出来なかった。
「俺は……だな」
平穏な暮らしを望んで、泣きの涙の両親を説得し、モンスター居住区に移住した。仲間の能力者に〝落ちこぼれの用なし〟と馬鹿にされようが、派手な『人間外種対策警備』を避けて地味な占い師になったのも、その為だ。それを腐れ男がクソマジにヤバい声でアスカを迷わし、壊そうとしている。フジの追伸がアスカにはそう読めてならなかった。
「クソっ」
迷わない選択もあったが、そこは考えない。男が悪いと思うことで、するべきことも見えて来る。時間が空いたのだ。すぐにもパシリらしく人狼の事務所に顔を出し、それで一切を終わらせる。腐れ男の〝癒し〟も見付けて、タイマン勝負で目くるめく愛欲の炎を頂く。男の魂を解放し、あとは占いだけの平穏な日々に戻る。
「やってやるぜ!」
アスカは鼻息荒く叫んだ。刹那に、すっかり忘れていた静寂が崩れた。
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