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記憶したい?

〝代表!〟 〝アルファ!〟 〝ヌぅぅシぃぃ〟  さすがに三度目ともなると、ルンルンしていた精霊達の調子にも、ほんの少し愚図りが入る。兎に角、アスカが動かないことには何も始まらない。そこに苛立っているのだろう。彼らは一刻も早く三者のあいだを奔走するアスカの姿を見たがっていた。 「ったく」  腐れ男を最初にしたのでも知れることだ。彼らには男が主役で、今もってその配役に揺るぎはない。アルファが二番手なのも、フジの追伸にあったように、男が張り合おうとする人狼への期待を表したものだ。ヌシを最後にしたのは、恨みがましく引き伸ばしたのでわかる。しみったれているが、応接室から追い払われたことへの報復だ。それならアスカは―――。 「クソ……ってな」  精霊達には脇役でしかない。それでも彼らには、なくてはならない役どころでもある。主役と脇役の結び付きが織り成す目くるめく愛欲の炎と魂の解放は、何としても記憶したい噂のはずだからだ。

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