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着替えたあとで?
「まぁ、いいさ」
アスカは細かいことに拘るのをやめた。精霊達のクソったれな楽しみには目くるめく愛欲の炎という喜びがある。そこを思うだけで、噂に貪欲な彼らの策略に乗るのにも文句はなかった。
「俺もルンルンしてやるぜ」
精霊達の騒ぎに負けないよう、アスカは声を大きくして言った。彼らは大喜びし、またも声を揃えてこれを叫ぶ。
〝代表!〟
〝アルファ!〟
〝ヌぅぅシぃぃ〟
今日一日、事あるごとに聞かされるに違いない。鬱陶しくあっても、慣れてしまえば可愛いものだ。アスカは精霊達の騒ぎをさらりと流し、モンスター居住区の中心街へ行くのに相応しい服装に着替えようと、自室に入った。着替えはすぐに済んだ。そのまま玄関ドアを開けてポーチから敷石に出る。道路へと足を進めながら、ふと気付いたように呟いた。
「なんかおかしくね?」
着替えたあとで言っても仕方ないが、ロングドレスにマントといった装いに、アスカは自分でも首を傾げてしまった。
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