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遣り過ぎ?

 フードの奥での呟きは独り言だ。誰に聞かせるつもりもない喋りだが、耳聡いモンスターには通じない。ヴァンパイア程ではないにしても、人狼にもひそひそ話は無駄ということだ。それを承知の独り言ではあったが、口にしてつらつら考えたことで、いい調子に顔繋がりの仲間意識が持てたと、アスカは思っていた。下っ端限定でも、服従のポーズや尻の匂いを嗅ぐといった狼特有の帰属儀式にはない親しさに、話し掛ける口調も気安いものになる。 「アルファ、いる?」  アスカは受付カウンターまでの距離を縮めつつ声にしたが、下っ端にはよろしくなかったようだ。怒りに顔を赤く染め、それ自体が生き物のように筋肉をムキムキと盛り上げ、スーツの縫い目が裂ける音まで平然と響かせ始める。 「おいおい」  〝落ちこぼれの用なし〟に用はないと言いたいのはわかるが、それだけの為に人間の姿を真の人狼に変えるのは遣り過ぎだろう。アスカは唖然とし、言葉も続かないでいた。

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