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呼んでくれね?

「えっと……」  フードの奥に顔を隠そうが、中身がアスカであることは一目瞭然だ。受付に人狼ではなく、アスカのような能力者がいても見間違えはしない。どちらも『人間外種対策警備』の職員で、アスカを〝落ちこぼれの用なし〟にしたモンスターと、〝落ちこぼれの用なし〟と思う人間とに分けられる。この瞬間には何の解決にもならない話だが、そうした区別は人狼がしていることで、職員としては仲間であり、アスカのことも口を揃えて馬鹿にする。ロングドレスとマントの下を知る彼らには、モデル並みと称賛される体形も母親似の女顔も、ただの間抜けにしか見えないようだった。 「てかさ……」  役に立たないことを、ちんたら考えても仕方ない。下っ端もムキムキな筋肉でスーツの縫い目を裂きはしても、まだ獣には至っていない。つまり顔繋がりの仲間意識が残されている。アスカはそう思い、その親しさのままに続けてみることにした。 「アルファ、呼んでくれね?」

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