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吠え声が?
顔繋がりの仲間意識が一方的とは、アスカには思えないでいた。周りに好きなようにされるのは、種族の壁も軽く越える腹立たしさだ。母親似の女顔と顔立ちの幼さといった違いはあっても、顔が理由で苦労していることに違いはない。実年齢に遥かな隔たりを認めようが、見た目が同年代では、アスカも気さくに話し掛けてみたくなる。
「けど……」
アスカはフードの奥で思い直すように小さく言った。モンスター居住区で初めて持てた仲間意識だが、それも目の前で始まった明らかな変容に、ぬか喜びだったと気付かせられる。顔繋がりに親しさを思う間に、きりりとした美丈夫さに理性を見るべきだったのだ。
「ったく」
下っ端の骨格には獣らしい獰猛さが現れていた。顔や体にも獣毛が生え始め、耳も尖り出して頭上へと移動し、鼻と口も膨らむように前へと伸びて、鋭い犬歯も剥き出しになる。そして甲走った吠え声が閑散としたホールに猛々しげに響き渡る。
「グオォォっ!」
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