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前以上に腹を?

「グオォォォっっ!」  下っ端が大口を開けて、またも吠えた。アスカがフードの奥で呟いたことに腹を立てたのだ。人間の姿から真の人狼に変わった今、下っ端の聴力は耳聡い程度ではない。遥か遠くの音まで知覚する。ピンと立った耳は研ぎ澄まされ、些細な音も取りこぼさない。〝吠えるだけのアホたれ〟も大音量だっただろう。それで吠えたとわかるが、こちらの鼓膜が破れそうな凄まじさで吠える程のことだとは、アスカにはどうしても思えなかった。 「クソっ」  アスカはこの状況にうんざりし始めた。口慣れた悪態が逆効果と理解もするが、下っ端が吠える理由を明かさないまま、次に何をするつもりでいるのかに気付いては、言いたくもなる。 「やろうってのか?」  嫌にはなっても、逃げはしない。 「そんな度胸、あんのか?」  アスカは声高に返し、けしかけるように続けて行く。 「吠えるだけのアホたれの癖しやがってよっ」  言うまでもなく、下っ端は前以上に腹を立てた。

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