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こいつがな?

「うーん」  アルファの禁欲生活には大して関心が持てなかったが、興味深げに唸ってしまったのは、アスカにはどうにもそれが思い描けないでいたからだった。 「ガキんちょのこいつでさえ……」  桁違いのムキムキさを見せている。アルファともなれば、超絶マッチョの化け物に変身するだろう。筋肉と情熱の巨躯に見合った黄金色の瞳に仄めく色気も半端ないように思えた。その黄金色の瞳が持ち腐れ状態にある。アルファには久しく本気の興奮がなかったのは確かだ。理性が保たれようが、肝心の興奮がないのではアルファも変身のしようがない。 「まっ、時代が変化したんだ、仕方ねぇさ」  人狼は獣として自然の中で生きるのをやめた。現代では人間と同じ法の下に、モンスター居住区で人間外種として暮らしている。 「ってのによ……」  アスカは懲りずに繰り出される下っ端のパンチをフードの奥で視界に捉え、迫り来た鉤爪をひょいとかわしてから言葉を繋いだ。 「こいつがな」

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