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軽い笑いを?
「まぁさ」
アスカはぼそりと続けた。
「一週間は暇だしよ」
それを不本意と思っても、事実は覆せない。腐れ男の指示に従ったフジに腹を立てようが、臨時休業の知らせをホームページに載せられたあとでは、どうしようもない。撤回させるのに労力を費やすより、一週間を有意義に過ごす方が幾らも賢い。
「こいつにしたって……」
そうそういつまでも不毛なパンチを続けられはしない。
「長くて昼だな」
子供の頭なら、腹が減れば嫌でもやめる。それまでの我慢と、アスカはフードを上向かせ、次のパンチに備えて下っ端を見遣った。
「うぅん?」
ところがそこに下っ端の姿はなかった。視線を向けたと同時にかき消えたのだ。代わりに目にしたものは、筋骨隆々とした巨大な肉の塊だった。僅かな崩れで醜悪となりそうな肉の塊だが、絶妙な均整によって艶やかな逞しさへと作り変えられている。その塊は人間の姿でもってアスカを見下ろし、口元に軽い笑いを浮かべて立っていた。
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