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ぴくりとも?
醜悪さと紙一重といった筋肉を艶やかに映すのは、マッチョな体型に合わせて作らせたと知れる暗灰色のスーツのお陰でもあるようだ。目の前に立つ男には、腐れ男のハンサムさに見るような優美さはないが、短く切り揃えられた漆黒の髪に、はっきりとした目鼻立ちに厚みのある唇、黒に近い茶色の瞳にも豪然とした濃さがあり、中々の色男ぶりを見せている。
「申し訳ない」
巨大な肉の塊から出される声の野太さにも、男臭い顔立ちと相まって、ゆったりとした大人の色気が匂い立つ。これはこれで相当もてるだろう。うぶなアスカにもそれくらいわかるが、わかるだけで気持ちは動かされない。上質なスーツが肉の塊を艶やかに映そうが、マッチョであるのに変わりなく、その裸となると、思うだけでも腹が立ち、興奮の二文字も吹き飛ばされる。それも裏切り者のアソコには関係ない話だ。今回も歓喜すると思っていたが、嬉しいことに、アソコはぴくりともしないでくれていた。
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