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変身が解けた?

「この子はリンというのだが……」  野太い声の優しさに、下っ端が震え上がった。反抗的な態度で体をもぞもぞさせていたのに、〝リン〟と呼ばれた途端、ぴたりと動きを止めたからだ。それがアスカには怯えに映ったのだが、人狼的には違うのかもしれない。アルファにしてもアスカにはわからない何かに興奮し、黒に近い茶色の瞳に黄金色の色彩を微かに散らして話を継いでいた。 「見たところは君と同じでも、我らには子供でね、礼儀にも疎くて困る」 「へぇ、そう?」  アスカはフードを軽く揺らしてリンを見遣った。アルファに倒され、踏み付けられ、その衝撃に変身を維持する興奮も冷めたようだ。しなやかで血色のいい青年を目にする。当然の結果だが、ムキムキな筋肉が引き裂いたスーツは細切れで用をなさず、リンはすっぽんぽんだ。理性のない興奮だけの変身が解けたあとの惨めさは、つるんとした尻を見ればアスカにもわかる。うつ伏せのまま、起き上がれはしない。

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