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最後の子?
仰向けで踏み付けなかったのを情けと思うのは早合点だ。アルファは大人の余裕で優しく声を響かせているが、リンの尻を踏み付ける様子には容赦がない。それで礼儀を口にされても、アスカには驕っているようにしか聞こえなかった。
「礼儀っうならさ」
時間と空間の歪みによって全ての現実が実際より遅く見えていたはずなのに、アルファの出現はまさに不意を突かれたようなもので、全く気付けなかった。それ程に素早くやってのけられたのだ。桁違いな能力をさり気なく見せ付けられたとも言える。これではアスカの細めで掠れている声も低く嫌みっぽくなる。
「あんたも……じゃね?」
「ふふっ」
アスカの嫌みにも、アルファは深沈とし、粋に口元をにやりとさせてから答えていた。
「リンは時代が変化する直前の生まれでね、我らには最後の子というのもあって、つい甘くなってしまう」
その言葉に嘘はないのだろう。リンの尻に向けるアルファの眼差しは柔和で温かかった。
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