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尻尾を振って?

「躾くらい、ちゃんとしとけよ」  アスカはむすっと返した。人狼的に特別な何かがある訳ではなかった。アルファがリンの尻を踏み付けたのは人狼らしい躾の一環で、リンがおとなしくなったのも、アルファの子供扱いに剥れただけのことだった。だからこそ、もっと厳しくしろと言いたくなる。 「着替えて来い」  アルファはリンに本当に甘い。そっと足を外して促している。しかし、リンはすぐに起き上がらなかった。人狼には子供でも、見た目はアスカと同年代の青年だ。素っ裸への羞恥心もあるだろう。そこに気付くと、アスカの気分は上向いた。理由もなく襲い掛かられたのだ。目を逸らさずに隅々まで眺めてやろうと心に誓うが、それも人狼のこすっからい抜け道のせいで台無しにされる。 「クソっ」  悔しげなアスカの前に大型犬に似た狼がぴょんと現れた。それがリンだ。リンは〝クゥン〟と鳴いてアルファの足に擦り寄り、頭を撫でられると、嬉しそうに尻尾を振っていた。

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