395 / 814

四つ足で器用に?

「ふざけやがって」  アスカはそう続けてフードの奥からリンを睨んだ。口調からそれとわかったのだろう。リンがアルファの足に絡み付くようにして鼻先をアスカに向ける。そのまま歯を剥き出しにし、狼がにたりとしたのなら、そうなるといった笑いを見せていた。 「クソったれがっ」  リンはアルファがいることで強気に出たようだ。アスカにすれば蹴り飛ばすだけのことだが、勢い余ってすっ転ぶ危険性のあるロングドレスだったのを思い出し、ここはリンと同レベルの威嚇攻撃から始めるのが得策と、それで〝グルルル〟と唸り返してやったのだが、アルファには笑われた。 「リン」  呼び掛ける声音にも笑いを含ませ、絡み付くリンの頭を軽く叩いて、言い聞かせるように言葉を繋ぐ。 「さぁ、行け」  リンは嫌そうに首を振っていたが、アルファの目付きにはびくりとし、仕方なさげにこくりと頷いた。言われた通りに奥へと走り、尻をフリフリ四つ足で器用に階段を上って行った。

ともだちにシェアしよう!