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許して欲しい?

「ふふっ」  アルファの余裕たっぷりなこの笑いを聞くのは、アスカには二度目だった。挑発的に腕を組もうが、嘲るように返そうが、アルファには屁でもない。落ち着いた笑いに大人の色気を漂わせ、肉の塊から放たれる鬱陶しいまでの男臭さで、歴然とした体格差をアスカに意識させる。 「クソ……がっ」  アスカに倒せる相手ではないのだ。アルファの余裕にも文句はない。それでもアスカは素早く動けるよう腕組みを解き、攻撃に備えて身構えたが、アルファには楽しまれてしまった。 「そんなに怒らないでくれないかな」  またもアスカにはよくわからない何かに興奮し、黒に近い茶色の瞳に黄金色の色彩を微かに散らして話を続ける。 「リンは時代が変化したあとの安寧な暮らししか知らなくてね、だからかな、瞳に成人を象徴する黄色みが現れない、君の訪問は予期していなかったし、いい刺激になると使わせてもらったよ、君には迷惑なことだろうが、リンの為と許して欲しい」

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