406 / 814

フードに顔を?

「ったく……」  アスカは辿り着いた結論に心なしかぞっとし、それを笑うように言葉を繋いだ。 「勘弁してくれよ」  ヌシを盲愛する初老の執事に、腐れ男を父親と慕う〝しもべ〟の変態では、どちらであってもアスカの理解を超えるものだが、リンの嗜好に口出しする気はなかった。初老だろうが変態だろうが、リンの薄い茶色の瞳には惚れた欲目でカッコイイと映っている。人狼として生まれても、安寧な暮らししか知らず、甘えるばかりで、瞳にも黄色みが帯びないリンに、何を言おうが届きはしない。 「ってもな……」  〝癒し〟探しが振り出しに戻った。それを面倒に感じたが、ほっとする自分もいて、アスカの口もむすっと歪む。 「やっぱ、クソだわ」  腐れ男を思っての悪態だったが、アルファには気付けないことだ。それなのにアルファは肉の塊を優雅な仕草で傾け、アスカのフードに顔を寄せて、万事承知しているといった風に親しげに声を返していた。 「君とは気が合うね」

ともだちにシェアしよう!