407 / 814
腐れ男と限定して?
「ふん」
アスカは即座に鼻先で笑い飛ばしてやった。勝手に身内扱いするなと怒鳴りたいのを、取り敢えず我慢したのだ。アルファとの戦力差を考えれば、ここはリンのように尻をフリフリ可愛く媚びた方がいいのだろうが、こと喧嘩に関して堅物なアスカには、まず無理だ。媚びるくらいなら、病院送りを選ぶ。そう思っての態度も、アルファには喜ばれてしまった。男臭い顔をさらに近付け、フードの奥を覗き込むようにして微笑んでいる。
「なっ?」
〝気が合う〟と言われたこともだが、意味深な微笑みもまた、アスカをイラつかせた。
「けど……」
アスカは耐えた。代わりにこう続けて、自分の気持ちも宥める。
「ヴァンパイアなんて、マジ、クソだし」
人狼にとってヴァンパイアとの恋愛は罵詈雑言の何ものでもない。アスカの〝クソ〟を喜ぶのも、思いを共有したと信じてのことだろう。アルファの優れた耳でも、腐れ男と限定しての〝クソ〟と、聞き分けられはしないのだ。
ともだちにシェアしよう!