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恋した経緯?

「てか……」  アルファが見せた親しさの意味も、これではっきりしたと、アスカは思った。アルファはヴァンパイアへの嫌悪をアスカと共有した気でいる。全くの思い違いだが、そうしておけば、魂の解放や愛欲の炎といったことは隠せる。格段の差がある戦闘能力も意識せずに済む。人狼に身内扱いされたのにはむかつくが、そこに苛立っても、笑って相手をしてくれる。アルファとの付き合いはこの場限りだ。媚びたくはない。病院送りも出来れば避けたい。思い違いはアスカにも都合が良かった。 「ヴァンパイアと話してっと……」  それでもアルファには近寄られ過ぎている。アスカは鼻に付く男臭さを払うようにフードを揺らし、足を横にずらしながら言葉を繋いだ。 「ホント、腹立つしよ」  アルファはフードを揺らされたのには不満でも、アスカの言葉には満足したようだ。優雅に傾けた肉の塊を元に戻し、口調も滑らかに、リンがヴァンパイアに恋した経緯を語り始めていた。

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